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都会の街は、平日でも週末でもたいして変わりはない。
どこに行ったって、そこら中がたくさんの人で溢れかえっている。
長野県の田舎町で生まれ育った私は、親からは県内の大学に行くように諭されていたけど。
その反対を押し切って東京の大学を受験した私は入学をきっかけにはるばるその田舎町からこの大都会へと出てきた。
住み慣れた町を離れた頃は、親元から離れた寂しさよりも、日本の中心‘‘東京’’に出てきたというワクワクした気持ちの方が大きくて。
初めての一人暮らしも楽しかったし、慣れない家事も下手なりに頑張っていたし。
大学やアルバイト先にも友達が増えてくると、都会暮らしは全然苦じゃなかった。
だけど、大学に入ってから初めての夏休み。
久しぶりに帰省した時に見た、親の嬉しそうな顔や、慣れ親しんだ変わらない町並みを歩いていると、なんだか無性に寂しくなったことを今でもよく覚えている。
都会生活にもどんどん慣れ、毎日楽しく過ごしていたはずだったのに。
生まれ育った環境に戻った時、東京に帰るのが初めて寂しいと感じたのだ。
そして寂しかったのは私だけじゃなかったようで。
いつもは明るい父や母も、私が東京に戻る日は珍しく物静かだった。
それでも別れ際は、笑って手を振ってくれたけど。
寂しそうに笑う二人の顔を見ていると、きゅうっと胸が痛んだ。
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