愛しさを忘れたいから。

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愛しさを忘れたいから。

いつからかなんて分からない。 それでもこれは恋って言うんだって、俺はあいつが好きなんだって知っていた。 俺たちの関係の始まりはなにぶん随分小さいころのことすぎて、ひどくおぼろげでもうはっきりとは覚えていないけど、確か両親が仲よかったからとか、家が近いからとか、そういう曖昧な感じだった気がする。 保育所と幼稚園で分かれていたから、ちゃんと顔を合わせて毎日話すようになったのは、小学校に入学してからだ。 仲よく一緒に通学していた小学生時代。 一緒に通学したらからかわれて、お互いにぎくしゃくした、中学生のとき。 俺は意地を張ったのに、夜道に墓地の前を一人で通るのなんて嫌だ、絶対嫌だと半泣きですがるあいつに根負けして、最終下校時刻の部活終わりまで待たされた。 生徒が少ないからか、部活の種類が全然ない割りに校則で入部は強制で、俺は仕方がないから卓球部に入って幽霊部員をしていた。 運動部の強烈な上下関係には上手く慣れられそうになかったし、かと言って文化部のあの空気というか、独特の雰囲気にも上手く馴染めそうになかったし、消去法で一番活動が少なくて緩い部にしたら卓球部だったのだ。 俺なりに一生懸命やって、楽しくやれていた。 難しい回転だって少しずつかけられるようになっていたし、ラリーも三桁まで続くくらいには入れ込んでいたし、ささいな自主トレーニングをしてもいた。 だけど、人間関係がこじれて駄目になった。 女子卓球部の、可愛いと有名な女の子に告白されて、好きな人がいるからごめんと断ったら、いつの間にか幼なじみが悪く言われていた。 衝撃だった。
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