11人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
愛しさを忘れたいから。
いつからかなんて分からない。
それでもこれは恋って言うんだって、俺はあいつが好きなんだって知っていた。
俺たちの関係の始まりはなにぶん随分小さいころのことすぎて、ひどくおぼろげでもうはっきりとは覚えていないけど、確か両親が仲よかったからとか、家が近いからとか、そういう曖昧な感じだった気がする。
保育所と幼稚園で分かれていたから、ちゃんと顔を合わせて毎日話すようになったのは、小学校に入学してからだ。
仲よく一緒に通学していた小学生時代。
一緒に通学したらからかわれて、お互いにぎくしゃくした、中学生のとき。
俺は意地を張ったのに、夜道に墓地の前を一人で通るのなんて嫌だ、絶対嫌だと半泣きですがるあいつに根負けして、最終下校時刻の部活終わりまで待たされた。
生徒が少ないからか、部活の種類が全然ない割りに校則で入部は強制で、俺は仕方がないから卓球部に入って幽霊部員をしていた。
運動部の強烈な上下関係には上手く慣れられそうになかったし、かと言って文化部のあの空気というか、独特の雰囲気にも上手く馴染めそうになかったし、消去法で一番活動が少なくて緩い部にしたら卓球部だったのだ。
俺なりに一生懸命やって、楽しくやれていた。
難しい回転だって少しずつかけられるようになっていたし、ラリーも三桁まで続くくらいには入れ込んでいたし、ささいな自主トレーニングをしてもいた。
だけど、人間関係がこじれて駄目になった。
女子卓球部の、可愛いと有名な女の子に告白されて、好きな人がいるからごめんと断ったら、いつの間にか幼なじみが悪く言われていた。
衝撃だった。
最初のコメントを投稿しよう!