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視線の先にある、夏のカレンダーで思い出す。
夏の盛り、華にせがまれて華のアパートの近くで催された夏祭りに出かけた。
立ち並ぶ屋台の中から焼きそばを購入して、境内へと続く階段をのぼっていく。
華と翔平は手を繋ぎ階段を上がっていって、登り切った所にある鳥居を通過してから、手を離した。
高台になったそこから見渡せ河原で小規模ながら花火があげられる。
それが見たくて、華は毎年飽きもせずに夏祭りに翔平を誘うのだ。
翔平は流石に五年目にもなると、飽きてしまって、手持ち無沙汰で焼きそばを食べ始めた。
翔平は焼きそばを食べながら、華の異変に少々眉を寄せていた。
本人は至って普通にしているが、翔平は夏辺りから、小さな疑問を抱くということの積み重ねで、華の異変に気がついていた。
華は例年と変わらぬくらい、目をキラキラとさせて、打ち上げられた花火を見上げていた。
そんな華をその場に残し、翔平は食べ終わった焼きそばのパックを、近くにあったごみ箱に捨てに行った。
そして、ごみ箱がある場所からやはり花火を、そして華を観察していた。
鳴りやんだ花火。
佇む、華。
君は何を見てるの?
君は誰を見ているの?
辺りを見回すその瞳には、自分がもう映っていないのだと、翔平は勘付いていた。
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