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目を開けると、自分の顔を見つめてくる沢山の大人たちの顔が見えた。笑顔を浮かべている人もいれば、涙を流している人もいる。でもその涙は決して悲しい涙なんかではなくて、どちらかというと嬉し涙のように見えた。
どの顔もすべて見覚えがあった。
誰よりも自分を愛してくれている両親の顔がある。いつも身体の状態を診てくれる先生の顔もある。いろいろと身の回りの世話をしてくれる優しい看護師さんたちの顔もある。
「──どうしたの……みんな、そろって……?」
声に出して聞いてみたが、その声は糸のようにか細かった。
なんで……ぼくの声は、こんなに……弱弱しいんだろう……?
自分でも不思議に思った。
「刻夢(キザム)、お前の手術が終わったんだよ……」
いつもは頑固な父親の目に、今はうっすらと涙の膜が浮かんでいた。
「しゅじゅつ……?」
頭がぼーっとしていて、父親の言っている言葉が理解出来ずにいた。自分が今置かれている状況が、いまいち上手く把握出来ない。
「状況が分からないのも無理はないのよ。少し前に麻酔が切れたばかりなんだからね……」
母親の頬には大粒の涙がこぼれ落ちている。
手術……麻酔……?
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