終章 エンド・オブ・ザ・デッド ~死者の結末~

19/46
104人が本棚に入れています
本棚に追加
/417ページ
流玲への後ろ髪引かれる思いを断ち切るようにして声を張り上げると、流玲の返事も聞かずに屋上のドアに向かって走り出そうとした。もうこうするしかなかった。これ以上流玲と話を続けていたら、一度は断ち切ったはずの流玲への思いが蘇ってきてしまいそうだったのだ。 「話の途中で……ご、ご、ごめんね……」 キザムは足を一歩前へと踏み出しかけたのだが、それ以上先に進むことはなかった。流玲の次の声を聞いて、思わず足が空中で止まってしまったのである。 「ねえ、土岐野くん……その薬って……? もしかして……もしかして……」 流玲の声に若干の変化が見られた。 「えっ? 今宮さん……急に、ど、ど、どうしたの?」 屋上から逃げ出すつもりだったのが、突然の流玲の変化が心配になって、逆に質問をしていた。 「──わ、わ、分からない……分からない……。でも、土岐野くんのその《薬》の話を聞いたら……急に頭の中に光が差し込んできて……。なんだか、いろいろな光景が思い浮かんできたの……。ねえ、これってどういうことなの? わたしの頭が混乱しているだけなの? それとも、それとも……」 何かに戸惑うような素振りを見せる流玲。キザムに向けていたはずの視線が左右に大きく揺らぎ始める。 キザムは瞬間的に流玲の異変の中身を察した。流玲は今、前の世界のことを思い出しそうになっているのだ。自分の知らない自分の記憶を思い出して、それで戸惑っているのだ。 でも、なぜこのタイミングで記憶が蘇ってきたのか?     
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!