2.彼と彼女の交差点

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2.彼と彼女の交差点

 彩綾が涼の屋敷で生活するようになったのは一年前。  同じ高校の同じクラス。けれど、涼は彩綾のことなど知らなかっただろう。  名家の御曹司であるというだけで注目を浴びるのに、学級委員を務め、尚且つ文武両道。少々生真面目すぎるが、礼儀正しく優しい、みんなの憧れの的だった。  対して、彩綾はこの世界のどこにも居場所すらない、惨めな境遇だ。  父は愛人と再婚し、母もずいぶん前に金をあらかた持って行方を眩ませた。月に一度、父だった人から送られる養育費だけが命綱。  仕方ないのだ。これは彩綾の運命であり、誰を責めることもできない。とっくに諦めていた。  だから、涼のこともただ憧れて、遠くから眺めているだけでよかったのだ。そのはずだった。  あの日までは。
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