君キス2~戦う女②

12/27
561人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
顔を覗き込めば、目を閉じて眠っているようだった。 何か嫌な夢でも見ているのだろうか、その表情がとても苦しそうで、思わずもう一度声をかけてしまう。 「朝比奈さん?」 すると、すぐに目が開いてしっかりと目が合った。 「大丈夫ですか? うなされてたから」 やっぱり、夢を見ていたんだろう。 驚いたような、呆けたような顔をしていたけれど、ちゃんと目が私を認識してくれたのがわかった。 ほっと目元が緩んだから。 私は、手に持っていたビニールの手提げ袋を朝比奈さんに掲げて見せた。 「コーヒー買ってきましたよ。ごめんなさい、遅くなって。売店行く途中で……」 すっと、朝比奈さんが真直ぐ手を伸ばしてくる。 てっきり、手提げ袋を取ろうとしているのかと思った。 「真帆」 「えっ」 寝起きの少し擦れた声で名前を呼ばれ、どきりとした。 その隙に取られたのは手提げ袋ではなく、私の腕で。 「キスしたい」 「えっ」 私の身体を引き寄せて両腕をしっかりとつかみ、見上げる目に縋り付かれるようだった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!