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「それにしても無事で良かったなぁ、蒼くん!!」  井上係長がアッハッハと大きな声で笑った。俺は勢いよく頭を下げた。 「よろしくお願いします!! 一生懸命頑張ります!!」 「いやぁ、本当にすっかり警察官の顔になったよねぇ。最初はまだまだ学生さんだなぁって感じだったけど」 「最初って蒼が制服忘れたときでしたっけ? あのときは俺も笑ったなぁ。……ね、結城部長」 「……俺たちが同じ体型で良かったな」  柏倉さん、結城部長とお馴染みのメンバーである。  柏倉さんはククッと可笑しそうに笑っていて、結城部長は表情一つ変えていなかった。この対照的な2人も相棒同士だというのだから、性格が真逆でも相性の良し悪しには関係ないのだろうな。 「……とりあえず、蒼くん。ようこそ、強行一係へ!!」  井上係長に差し出された右手を俺はすぐに握り返した。  俺が刑事実習で配属されたのは、刑事課の強行一係。井上係長、結城部長、柏倉さんの島だ。こんなに上手く望んでいたところに配置になるなんて、思いもしなかった。  すると、柏倉さんがニヤニヤしながら俺の肩を叩いていきた。 「……今回はね、井上係長が蒼を指名したんだよ。どこにどの実習生を配置するかの話し合いで真っ先に“俺が指導したい”って」 「え、そうなんですか?」 「だってさー、結城と柏倉はペアで俺は余りじゃん。狡い!! 俺も相棒欲しいもん!!」 「……何を子どもみたいなこと言ってんだよ。気持ち悪いから頬を膨らますな」  井上係長の言葉に、溜め息混じりの結城部長の鋭いツッコミが入った。 「あー、酷い!! 一応、俺は上司だぞ!!」 「はいはい……すみません、井上係長(・・)」  2人のやりとりに俺が呆気に取られていると、柏倉さんが俺に耳打ちしてきた。「心配すんな、あの2人は同期生だから」と。警部補と巡査部長であるはずの2人のやりとりを見ながら、俺はなるほどと合点がいった。
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