第六十四話  大伯父の館

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鞘が見当たらなかった。 振り回したときに抜けて飛んで行ったのだ。 長すぎて一人で抜けるような太刀ではない。 もし、抜けなければ、今頃は自分の首が転がっていただろう。 返り血を浴びた腕が小刻みに震えはじめた。 くぐもった笑いがこみ上げる。 その声も震えをおびている。 「いつまでたっても慣れぬのう……こたびは仇でも山賊でもなし」       *
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