近衛隊長の処女懐胎

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近衛隊長の処女懐胎

「……は、はは。今、なんと言いましたか」 人は理解を超えた事を言われると、呆けて笑いがこみ上げてくる。 だが、笑っている場合ではないし、目の前にいるのはへらへらと笑いながら会話のできる相手ではない。 夕日を透かした豪奢なステンドグラスからは、七色の光が差し込んで、室内をきらびやかに染めていた。 その彩色の後光を背負って立っている男は、純白の法衣を身につけていた。白は、最高位の神官の証だ。そして、金糸のような彼の髪と同じ色に輝く、黄金の冠。 神に仕える偉大なる王。 「もう一度言う。バシリー……バシリー・ヴァルター。私の親愛なる友人、私の近衛隊長よ」 「は、はい陛下」 「バシリーは……その……えーっと……妊娠している」 今度こそ。 バシリーは、その場に尻餅をついて大笑いをした。 厳格で、冗談など絶対に言わない主人に突きつけられた現実は、あまりに唐突で、滑稽で、受けいれ難いものだった。 もう笑うしかない。 顔を痙攣らせて笑いながら、硬い腹筋を抑える。 この腹の中に、いるのだ。 この国で『神』と崇められているものの子が。 ※※※※※ ファーテリス神聖国という国は、大陸諸国の中でも最も面積は小さい。     
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