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「そこまで言うのなら、やって貰おうか。でも、あんた……全然占い師っぽくなくて、むしろ怪しいけど、占いなんて出来るの?」
「……一応、占い師ですからね」
美聖は唇を尖らせながら、答えた。
自分でも、役不足は認識している。
占い道具と、参考本で鞄をぱんぱんにして、出勤はしているものの、装いは事務職をしていた頃と変わらないオフィスカジュアルだ。
お気に入りの花柄のスカートと、紺色のカットソー。
無難ではあったが、占い師としての奇抜さは足りず、おまけに、お店のエプロンをしているので、どう見たところで、占い師のイメージから程遠かった。
「やっぱり、私より、トウコさんの方が適任なんじゃないでしょうか?」
「何を言っているのよ。メインは美聖ちゃんなんだから……」
「どうしても?」
「降沢在季のご指名でしょう?」
「……分かりました」
それが仕事なのだから、美聖は堂々と胸を張らなければならないのだ。
美聖は円卓の下から、道具の入った袋を取り出し、中から愛用しているタロットカードを取り出した。
七十八枚のライダーウェイト版タロット。
二十世紀初頭アーサー・エドワード・ウェイトが製作したタロットカードの通称である。
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