母じゃない日

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母じゃない日

 深夜のオフィス。データの入力に一区切りつけ、私はゆらりと立ち上がった。眠い……。  ドリンクコーナーでは、目の下にクマをつくった後輩がカップメンをすすっていた。  コーヒーをいれる私に、後輩が声をかけてくる。 「5月13日、楽しみですね」 「13日……ああ、休み……やっと休める……」  休みだから一日中寝られる! ああ、楽しみ――とうっとりする私に、後輩は呆れたように言った。 「休みは休みですけど。初めての『母の日』でしょ」  疲労でぼんやりしていた脳がいきなり覚醒した。  そうだった! 今年の『母の日』はいつもと違うのだ!  離婚歴あり、小学5年の娘ありの彼と結婚したのは去年の秋だ。  4年付き合っての結婚だったからか、クールな性格の娘だからか……特に抵抗はなく、「お母さん」と呼んでくれている。  『母の日』かぁ、と頬を緩ませた私はハッとした。 「待って! 『母の日』ってお母さんの日頃の苦労に感謝する日だよね? ヤバイよ! 私、何もしてない! 料理も洗濯も掃除も……彼と娘が分担してやってくれてる! 参観日も行事も全部、仕事で行けなかったし!」     
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