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──こんこん。
窓をたたく音がする。
顔を覗かせると、明るい日差しが差しこむ硝子越しに、ふさふさと揺れる尻尾が見えた。
「ああ、開いてるよ。もう終わったの?」
一言かければ、からりと窓が引き開けられる。
勝手に上がりこんでくるのは、彼にとっては馴染みの知り合い。太い尻尾と三角の耳と、早い話が喋る狐という訪問者。
「終わった」
「早かったね。まだお昼前なのに」
「昼前じゃなくて朝に近いから、今の時間」
すたすたと、窓から上がった客は座卓まで歩いて腰かける。
そのまま、卓上にぱたりとつっぷしてしまう。
「不満足、ってところかな」
水の入ったコップを置いて、
横宮は何気ない口調に問いかけた。
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