子の話

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「そのように、父母を愚弄するなど、許さぬ!」  思わず刀に手をかけたけれど、子どもの刀なんて大体が竹光で、そうでなくても抜けないように紐で結わえてあるものだから、誰も驚いたりはしなかった。  逆に、面白がって囃し立て、小突き回された。 「ばかっ。撤回して、謝れ!」  むしゃぶりついていったけれど、あっさりと地面に突き転がされた。  悔しかった。  父上は、八丁堀で一番の、剣術の名人と言われているというのに――  よろよろと立ち上がりかけた時、誰かにまた突き飛ばされて、庄太郎の足は空を踏んだ。  あっと思う間もなく、目の前が真っ赤に染まる。  起き上がろうとしたけれど、左の腕がだらんとなって、痛くて息もできない。  どうしよう――  不意に周囲の物音が遠のいて、目の前がぐにゃりと歪んだ。
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