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なんか、知らない人がいる
「おかえり」
宮森がアパートの自室に帰宅すると、ものすごく穏やかな笑みを浮かべて当たり前のようにソファーに座っている中年の男がいた。
宮森は、35歳独身。男の一人暮らしである。
しかも、宮森はこの微笑みを浮かべる男を知らない。
「……誰?」
こういうときには女々しい程の悲鳴が出るものだと思ったら、意外と冷静に疑問をぶつけることができた。ただ、鞄をドサッと床に落としてしまっていたが。
「あ、私は怪しい者ではありません。神様です」
「警察呼びますね」
「ちょっとちょっと!!」
男はソファーから立ち上がって、ポケットからスマートフォンを取り出した宮森を制止するように両手を上げて近付いてきた。
「……近付かないでください」
「待って、警察呼ばないで!!神様だから。私、神様だから。……あっ、信じてないね?!」
「信じる人なんています?」
「まぁ、そうだよね。どうしたら、信じてくれる?」
そう逆に問われて、宮森は困惑した。考えたこともなかった。
まさか今の今まで神様だと名乗る男が目の前に現れるなど想像もしていなかったし、もし神様が現れるとするならばもっと奇跡的な場面ではないのかと思う。
神話や日本の昔話を読んでいて、神様とはここぞというときに現れるものだと勝手に思っていた。
それがどうだろう。
神様と名乗る人物はまるで家族のように普通に宮森の部屋のソファーで寛いでる状態で現れた。
そして何より、ビジュアルに問題がある。
「……見た感じからして、神様じゃありません」
「えっ?本当?」
「あなたは、普通のおじさんに見えます」
神様と名乗る男は、50歳から60歳の間くらいに見える。
服装はチノパンに、ワッペン付きの派手なトレーナー。どう見てもゴルフ好きのおっさんにしか見えない。
頭髪は白髪混じりの髪を綺麗にセットしているけどちょっとM字に禿げ上がっているし、なんなら鼻の下にはチョビヒゲを生やしている。
どこかの会社の役員だと言われればそうかと思う。
要は、どこかの会社役員のおっさんが休日にゴルフをしてきた風のビジュアルなのである。
宮森は、そのビジュアルに疑問を呈している訳だ。
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