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彼女と僕が京都を離れるまで、できれば毎日会いたいと言い出したのは、いつだっただろう。
桜の散る疏水沿いを歩いていた時かもしれないし、二件目のレトロ喫茶巡りをしていた時かもしれない。
「毎日会いたいけど……そう思うのは、私だけかな? わがままかな?」
控えめに、けれど、自分の意志ははっきりと伝えるのは、いつも彼女のほうだった。
「いや、僕も会いたいよ」
そう言えたらいいのに、「雪さんだけでは……ないと思うよ」だなんて、遠まわしな表現をしてしまう。
不器用で、恋に慣れていなかった。
けれど、彼女は笑って、「隆哉君らしいね」という言葉で受け止めてくれた。
初めて、恋を知った。自分よりも大切な人ができた。
ゆったりと時間が流れるこの街で、僕は君に恋をしていた。
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