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眠りから覚めた梨子は、嬉しそうな表情を浮かべて身支度を済ませた。
幼馴染の家へと迎えに行けば、そこには明らかに寝不足といった様子の望の姿があった。
「おはよう、望」
「おう」
並んで通学する中で、彼女は嬉々とした様子で望へ夢を見たという話を切り出す。
夢の話など聞きたくもない望は、早く話題が変わらないかと考える。
深層心理か何か知らないが、夢の中の彼女を殺人犯にしてしまうこと自体に後ろめたさを感じていたのだ。
「凄い幸せな夢だったの。詳しくは言えないけど、望も出たのよ」
「へえ」
「とっても悲しくてでも幸せな夢だった。また見たいなぁ」
「そうかよ。俺の夢にも梨子が出てきてさ」
幸せそうに、まるで未だに夢でも見ているのではないかというような表情を浮かべているあたり、それはそれは幸せな夢を見たのだろうと彼は羨ましく思える。
望は自分の夢の中に梨子が出てきたことを告げる。
すると彼女はきゃっ、と嬉しそうな声を出してどんな夢だったのかと問いかけてくる。
「もしかしたら、私たち同じ夢を見てたのかも!」
「んなわけあるか。俺は酷く悲しくて胸糞悪い夢だった。もう、見たくない」
「ふーん……じゃあ、私たちが見たのはまるっきり違う夢だったんだね」
残念そうに笑っている梨子に、望は頷く。
彼女と自身の見ていた夢が同じものであるはずがない。
そう信じて疑いはしないのだ。
「当たり前だろ?別の人間なんだから、同じ夢を見るわけないだろ」
「それもそうね」
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