小さな神様

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「優、、お前、またか」 「あははぁ、ごべんださい」 優は懲罰房の常連だ。 刑務所では、決まり事を守れない者を独房に移し、朝から夕方まで何もさせずにただ座らせると云う罰が与えられる。 何もしないでただ座る。 ただ、黙って、誰とも話さず、何もせずに座り続ける。これは見かけより恐ろしい程に辛い。 しかし優は、懲罰を終えて一般房に復帰しても、一週間と空けず、またここに戻ってくる。 優は責任能力があると判定されるが、しかし軽度の知的障害があり、そのことは施設側も認識しているのだが、なんと言ってもここは刑務所である。 罪を償う場所であり、障害が有るからと云っても、甘えは許されない場所なのだ。 「おい、優、お前、今度は何をやらかした」 「じいちゃんに、芋を、あげまいた」 「芋か・・・で、お前はじいちゃんに、何を貰ったんだ」 「トンカツでし」 「優、食べ物を人にあげたり、貰ったりしては駄目だってのはここの決まりだって前も教えただろう」 「でも、じいちゃんが、泣きべそかいていたんでし。可哀想でしよ」 「ったく、お前は・・・」 刑務所での食事に使用される食材は劣悪である。 米は廃棄寸前の古古古米であるし、ここで出てくる肉類、特に一枚肉のトンカツなど、それはもうタイヤのゴムの様に硬く、歯の悪い高齢の囚人には食べるのがとても辛い食材でなのである。 優はつまり、隣の爺さんに自分の柔らかい芋を与え、自分は爺さんの、その硬いトンカツを、代わりに 食べてやろうとしたのだ。
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