失恋の続き

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*  わたしの恋の始まりは、高校の入学式の日までさかのぼる。  体育館での式典後、クラスに戻るとまず先生が自己紹介をした。若い男の先生は去年も一年生の担任だったというだけあって、慣れた様子で緊張しているわたしたちの笑いを取っていく。  それから生徒たちの番となり、廊下側の一番前から順に名前や出身中学、趣味なんかを紹介した。笑いがあったり、あっさりと終わったりを繰り返していた八人目。ガタガタと音を立てて立ち上がった男子の笑顔に、わたしは一瞬で魅入られた。 「時田瞬、西中出身です。高校もバスケ部に入ろうと思ってます。よろしくお願いします」  型どおりのなんてことない自己紹介だった。だけど、わたしはその一挙手一投足から目を離せなくなる。胸が空洞になったみたいにすかすかした。自己紹介は続いているのに、嘘みたいに私の身体は固まってしまっている。 「本田あかりです……」  前の子の自己紹介が始まってようやく自分にも自己紹介が回ってくることを思い出した。交代で立ち上がった時、わたしと時田くんの視線がぱちんと合わさった。  わたしが彼をずっと見つめていたせいで、時田くんが自己紹介する人にちゃんと視線を向けていたからだ。  一瞬でパニックになったわたしは、その後の自己紹介でなにを言ったかまるで覚えていない。  わかったのはただひとつ。  わたしは時田くんにひと目惚れしてしまったってこと。
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