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失恋の続き
夏の日差しがジャージ越しにわたしの背中をツンツンと焼く。
じっとしていたら肌が赤く焼けてしまうのはわかっていた。だけどわたしはそこから動けない。
彼のまつげが涙で濡れていた。
それだけでもすごく、すごく、特別なことだ。
──泣いてる。
わたしたちは視線と視線とがぶつかったまま、しばらく動けずにいた。
──どうしよう。
男子が泣いているというだけでも特別なことなのに、よりによって彼はわたしの好きな人だった。
「槇、口かたい?」
眉をハの字にした困り顔で時田くんが聞いた。
わたしは時田くんの信頼を失いたくないと、必死に頷く。きっと、泣いていたことを誰にも言わないでほしいと言うのだろう。そう思っていた。
それなのに時田くんは私が頷くと、くしゃりと破顔して言う。
「ぶっちゃけていい? 俺、失恋した──」
今度こそわたしは息を飲んだまま動けなくなった。
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