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「ねぇ、あの子ほんとに咲田さんだったの?確認しに行ったんだよね?」
京ちゃんがサラダを食べながら眉間にシワを寄せたけど「全然人違い!私ちょっと病んでるかも」なんて笑って誤魔化した。
後ろを人が通るとひやりとする。
悠君、お願い来ないで。
私達はお客様で、悠君はここでは店員でしょう?
私には、今その事実しかわかんない。
すべてが意味不明で頭のなかも胸のうちもぐちゃぐちゃ。テーブルのしたで、ぎゅっと膝を掴むしかできない。
「もうしつこいなぁ、また鳴ってる」
自分のスマホを横目にうんざりした声を上げた京ちゃんが、少し嬉しそうな顔をした。
何度も鳴ってるスマホに出ようとして、ためらった末に無視してることに私も雅ちゃんも気付いてた。
「タカヤ君反省したんじゃない?」
「どうせ泣きついてくるだけだよ。いつものパターン」
彼はきっと謝りたいし、ちゃんと仲直りしたいんだと思う。
そんなふうに想われている京ちゃんのことがすごくうらやましかった。
「いい加減許してあげなよ」
雅ちゃんが笑ってそう言ってくれたおかげで、私もこの店に長居しなくてすんだ。
一度もどこにも視線を投げ掛けず、
3人で店を出た。
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