言ってみた。 【ヒロ】

1/4
97人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ

言ってみた。 【ヒロ】

仕事終わり、居酒屋で同僚の宮河と二人。 他愛ない話をしていたつもりが、 「え、今から何か話すの?」 バレてる…。この緊張感、見事に伝わってる…。 お互い酔っ払った末になんとなぁく、軽ぅく。それとなぁく言うつもりだったのに。 一杯目で見破られるとは。 そうだよなぁ、一緒に働き出してからほぼ毎日一緒にいるもんなぁ。俺だってミヤの違いくらい分かる自信がある。ヒロとかミヤとかあだ名で呼び合ってる社会人もなかなかいないだろうなぁと、今改めて思った。 「あ、うーん…まぁ」 言うしかないな、もう、これは。 例え今の関係が壊れても。…嫌だけど。 ジョッキの中の黄色いやつを飲み干し、付いた水滴を拭くように両膝に手を置く。咳払いを一つ。 「俺さぁ、この前別れただろ?彼女と」 「三日前でしょ」 「あー、そうだっけか」 「そうだっけかって…」 ひどい、と小さく咎められる。 「いいから聞けって。それって言うのも俺が…」 「ヒロが?」 ヤバい。見たらミヤも心なしか顔を強張らせているような。 「やっぱやめるか、この話」 「いやいやいや話してよ、気になるじゃん!」 口に付けていたジョッキを慌てて下ろすミヤ。     
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!