清水湊side3

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……とりあえず水を飲もう。 冷蔵庫をあけてミネラルウォーターを飲み、若菜のぶんも水をコップにつぐ。 ほんと、なにかしていないと落ち着かない。 だけど、動き回っているのも不自然で、俺はコップをもってローテーブルの近くに座った。 脱衣所のドアがあき、タオルを首にかけた若菜がこちらにやってくる。 「あ、お風呂ありがとう」 「水飲む?」 「あっ、ありがとう」 髪が濡れたままの若菜に水の入ったコップを差し出す。 修学旅行の夜がふいによぎった。 若菜の部屋着姿を見たのがその時だったからだろう。 小学校の時は同じクラスで、その後みんなで夕食だった。 中学の修学旅行の時は違うクラスで、風呂上りの若菜はたまたま見かけた。 若菜は女子たちとお土産屋に行くところで、そこに若菜と同じクラスの男子数人が合流した。 あの時楽しそうに歩く若菜を見て、なんとなく複雑だったことも思い出す。 今若菜は、俺の渡したTシャツとズボンを着て……まさに“泊まりに来た”って感じだ。 その姿の破壊力を想像していなかったから、まともにくらって目が合わせられない。 俺のまわりだけ温度があがった気さえした。 「湊もお風呂入る? さっと洗っておいたんだけど」 「あー、ありがと。俺はシャワーでいいや」 「そう?」 とりあえず、俺もさっと体洗ってこよう。 もういい時間だし寝る時間だし、若菜を寝かさなきゃいけないしと、動揺しそうになる自分に暗示のように言い聞かせる。 「ドライヤー持ってくるからここで乾かして。俺も入ってくるから、眠かったら寝てていいから」 ベッドを指さした後、脱衣所からドライヤーを取ってきて若菜に渡す。 「ありがとう。……なんか、なにからなにまで、湊にお世話になってるね」 「それ、いつものことだろ」 「そうかな。そうかもね」 ふふ、笑う若菜を見て、俺にも自然に笑みが浮かぶ。 言葉通りさっとシャワーを済ませ、部屋に戻ると若菜は髪を乾かし終えたところだった。 「もう寝ようか。若菜ベッド使って」 「……ほんとに湊、床で寝るの?」 「別になんとかなるからいいよ。ほら、布団入って」 ベッドの布団をめくり、気が進まなそうな若菜の肩を軽く押す。 若菜はどうしたらいいかわからない、といった顔で瞬きを繰り返していたが、俺に押されてベッドの端に座った。 「遠慮してるならいいから。寝ろって」 「…………」 「若菜」 「……湊。ぜんぜんわかってない」 「は?」 意味がわからず目を瞬たかせた時、若菜は赤い顔で俺を睨みつける。 「湊を床で寝かせて、自分はベッドで寝るなんて、できるわけないじゃん」 「いや、俺がいいって言ってるんだから、いいんだって」 「私たち付き合ってるよね?」 若菜の声が強くなり、思わず俺のほうの声がしぼむ。 「あ、そりゃ……。うん」 「じゃあ」 若菜はぐいっと俺の腕をひっぱり、自分の横に無理やり座らせた。 「湊も!床じゃなくて、ここで寝て!」
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