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「湊、あの」
「ん?」
「言いづらいんだけど……。Tシャツとかズボン、貸してくれない? そこまでは買ってなくて」
「あー」
「わかった」と言って、実家から持ってきた衣装ケースの引き出しをあける。
背中に若菜の視線が刺さるが、とりあえず顔を背けられたのはよかった。
変に熱いし、顔が赤くなってる気がする。
若菜の着られそうなシャツ小さめのサイズのTシャツと、紐をしぼればなんとか履けそうな短パンみつくろい、若菜にばれないよう深呼吸した。
よし。普通だ。普通。
「これ使って」
「ありがとう」
「風呂の湯止めてくる」
一旦風呂場へ戻り、タオルを取って若菜に渡す。
「はい、これ。ユニットバスだけど、ゆっくり浸かって」
「うん。ごめんね、じゃあお風呂借ります」
「あー。いってらっしゃい」
脱衣所のドアが閉まると、堪えていたなにかがぶわっと喉まであがってきた。
「はぁぁぁ」
どーすんだ。
いや、そりゃ俺ももう30歳だし、彼女だっていたことあるし、こういうこと未経験ってわけじゃないけど。
でも……今彼女は若菜で、風呂入ってるとか、落ち着いていられねー……。
(……とりあえず片付けるか。あ、シーツ交換しとこうか)
若菜を寝かせるなら、俺が使ってるやつじゃ、なんとなく悪いよな。
シーツの交換をして、俺が床でくるまれそうなタオルケットもないか、まだ開けていなかった段ボール内を探す。
しかし自分で入れた覚えのないものは出てこず、バスタオルが数枚見つかっただけだ。
(バスタオルでもいいか。ラグは敷いてるしクッションはあるし、なんとかなるだろ)
あれこれ動いていると、すこしずつ冷静になってくる。
だけど脱衣所の奥から風呂場のドア開いた音がした途端、若菜が風呂からあがったんだとわかり、心拍数が急上昇する。
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