清水湊side3

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「湊、あの」 「ん?」 「言いづらいんだけど……。Tシャツとかズボン、貸してくれない? そこまでは買ってなくて」 「あー」 「わかった」と言って、実家から持ってきた衣装ケースの引き出しをあける。 背中に若菜の視線が刺さるが、とりあえず顔を背けられたのはよかった。 変に熱いし、顔が赤くなってる気がする。 若菜の着られそうなシャツ小さめのサイズのTシャツと、紐をしぼればなんとか履けそうな短パンみつくろい、若菜にばれないよう深呼吸した。 よし。普通だ。普通。 「これ使って」 「ありがとう」 「風呂の湯止めてくる」 一旦風呂場へ戻り、タオルを取って若菜に渡す。 「はい、これ。ユニットバスだけど、ゆっくり浸かって」 「うん。ごめんね、じゃあお風呂借ります」 「あー。いってらっしゃい」 脱衣所のドアが閉まると、堪えていたなにかがぶわっと喉まであがってきた。 「はぁぁぁ」 どーすんだ。 いや、そりゃ俺ももう30歳だし、彼女だっていたことあるし、こういうこと未経験ってわけじゃないけど。 でも……今彼女は若菜で、風呂入ってるとか、落ち着いていられねー……。 (……とりあえず片付けるか。あ、シーツ交換しとこうか) 若菜を寝かせるなら、俺が使ってるやつじゃ、なんとなく悪いよな。 シーツの交換をして、俺が床でくるまれそうなタオルケットもないか、まだ開けていなかった段ボール内を探す。 しかし自分で入れた覚えのないものは出てこず、バスタオルが数枚見つかっただけだ。 (バスタオルでもいいか。ラグは敷いてるしクッションはあるし、なんとかなるだろ) あれこれ動いていると、すこしずつ冷静になってくる。 だけど脱衣所の奥から風呂場のドア開いた音がした途端、若菜が風呂からあがったんだとわかり、心拍数が急上昇する。
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