裏切りすずめ

2/16
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
息子は、嫁と娘を迎えに行くことはありませんでした。母親と嫁の相性が悪いことに気づいていたので、一緒に暮らしてはお互いに可哀想だと考えたのです。 その後、母親は軽い病気をして寝込みました。このとき、大変なことに気がつきました。一人きりの息子に嫁がいないと、母親の看病をする人も、母親の代わりに息子の世話を焼く人もいないのです。そこで、親戚のお嬢さんを息子の新しい嫁にもらうことにしました。 新しい嫁には子どもができなかったので、嫁は母親が求める通りに家のことをしてくれました。母親は新しい嫁を気に入り、周りにも自慢していました。 それから十余年が経ち、いよいよ年を取った母親は、いまだに息子に子どもがいないことを心配するようになりました。母親は嫁に「そろそろ後継ぎを産んだら」と勧めましたが、嫁は曖昧に笑うだけでした。 嫁は息子から、子どもを産んでほしくないと言われていたのです。 息子は前の嫁が産んだ娘に愛情があり、たびたび時間を見つけては会いに行っていました。ですからもう一人ほしいとも思いませんでしたし、今の嫁が身ごもって家のことをしなくなったら、母親がまた不機嫌になると考えたのです。母親が不機嫌になれば、結局のところ嫌な思いをするのは嫁ですから。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!