雷雨とライバル 10

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「……雷がひどくなりそうですから……先に帰ってください」  ピカピカと光る空を見上げ椿は力なく笑うと手の砂を払い頬の砂を払った。  震える指を悟られないようにスカート部分の砂を払う。流れる涙も汚れた顔もこれ以上見られたくない。椿は下を俯くとワンピースの砂を落とすことに集中した。 「私は、もう少し……落ち着かせてから帰ります」  庸介は黙ったまま何も言わない。 「……庸介さんが浮気をしたわけではないですし、私がこんなに怒るのはおかしいですね。……きっと、私より経験もあってこなれた人なら……もっと可愛く怒って可愛く仲直りできるのかもしれません」  庸介は去らずにまだ目の前にいる。靴が目に入った。コーデュロイのパンツからひもの革靴が見える。  庸介さんはいつ会ってもおしゃれだ。今日も……本当にステキだ。  こんな私にはもったいない人なんだと思う。やっぱり、私では庸介さんには 不釣り合いだ。
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