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 平日の月曜日、あらかたの家事を終えて小休憩をとる私の傍ら、こちらも一仕事終え紫煙をくゆらせながらコーヒーを啜っていた旦那を、見た。 「これって、面白いのかね? どうして彼女は難病を与えられたのかしら」  私は読みかけの小説の内容に納得がいかず、加湿器のように隣で呑気に煙を吐く旦那に訊いた。 「面白い面白くないの話じゃないだろ。人にとって普通が一番の幸福だという事を気付かせたいだけだ」 「じゃあ彼女だけ不幸にして、彼ひとりだけ幸せになってやるぜ、ってお話なのね」  どんな結末を迎えるか分らないけど、多分そんな展開が予想される。私の意見に納得いかないような表情で、「黙って読め」と言いたげな視線を投げつけていた。いやもしかしたら、「黙って、嫁!」かも知れない、こいつならありうる。  私は旦那から無理矢理に視線を剥がし、読みかけの小説に戻した。 難病を抱えたヒロインは図書館で働く司書だった。私はふと三年前のことを思い出した。
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