9.休まない翼

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「君は3年を経て再び私の前に現れた。せっかくだから、生き残りのその血を楽園に混ぜてみたい。きっと美しい子が生まれるだろう。国は滅んでも、そのオメガの血が楽園で生きていく。そして私は君を愛でる。・・だめかな?」 ――この血が残る・・。滅んだ故国の血が、この国の王族と混ざって・・。でも、でも。 無邪気に問うリアムに対して何も言えなかった。きっと何を言っても聞かないのだろう。そして自分はきっとこのまま、この底の知れない王族に囚われる。 ――でも・・。 「・・俺には、答えられない・・・。やってしまったこと、償うべきだと、思うから・・。」 ははは、と声を上げて笑ったリアムは楽しそうだ。どうして笑うんだろう。 「冷静になった途端に、随分と殊勝になったね。頭に血が上った君の行動は結構面白かったけどな。警備の堅いアイザックの屋敷に忍び込むなんて、エストレーラでもしなかったことをやってのけて。シエルにした事はともかくとして、君は本当に面白い。・・行こうか。」 「えっ・・?」 困惑したまま手を引かれ、痛む体を引きずられるように部屋を出た。 「どこに・・っ?」 「悪い事をしたら、謝るのが筋だろう?シエルは動けないから、こっちから行こう。」 ――行くって、行くって、ヴェントの屋敷・・? あっという間に広い王宮を通り抜けて、馬車に押し込まれた。御者に行き先を告げるリアムを呆然と見て、わけも分からないまま馬車はエストレーラの屋敷へ向かった。
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