嘘吐きロゼの願いごと

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 それに碧鱗を手に入れたのは、ロゼが通算百回目に落ちた落とし穴の中だった。それだけでより信憑性が増す、と言いたかったが、またロゼが膨れると思ってカイは敢えて口にしない。 「とにかく、それを持っているせいで、俺たちはいつもお尋ね者扱いだ。持っていても厄介事しか起こらない宝なら、早く手放した方がいい」  高価な宝の噂は、自然に人に渡る。恐らく噂の出所は鑑定士あたりだろうが、そうなると次にやって来るのは、『宝は取った者が所有者』豪語するならず者から命を狙われるという展開。実際、これまで八度も強面の連中に追いかけられた。  だから心配でならないのだ。 自分が狙われるだけならまだしも、ロゼに危害を加えられるのは耐えられない。 「売るのが嫌なら、何か願いとかないのか?」 「うーん『私をボン、キュ、ボンのナイスバディにして下さい』とか?」 「はぁ……もっとまともな願いにしろよ。それじゃ碧鱗が泣くぞ」 「じゃあ、ラズベリージャムたっぷりのクルミパンをお腹いっぱい食べたい!」  けれど、ロゼといえばいつも願うことが平凡なものばかり。せっかく何でも願いが叶うというのなら、冒険家なんて辞めて暮らしていける大金が欲しいとでも望めばいいのに、とカイは思う。 「あのなぁ、ロゼ……」 「ん?」     
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