嘘吐きロゼの願いごと

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「アレ? アレって?」 「アレって言ったら、一つしかないだろう。―――『神龍の碧鱗』だよ」 「ああ、これね」  漸く思い出したロゼが、腰袋の中から涙の形をした青緑色の碧玉を取り出す。  光も当たっていないのに内側から淡い光を放つその宝珠は、神龍の碧鱗と呼ばれるもので、多くの冒険者が血眼になって探し求めている至高の宝の一つだ。  石の純度もさることながら、碧鱗自体に『何でも一つだけ願いを叶えてくれる』という特別な力が宿っているため、数多の宝の中で一番価値の高い宝石とされている。どれくらいの価値かというと、握ったら掌に隠れてしまうくらいの小ささにも関わらず、売れば一生豪遊して暮らせると言われるほどだ。 「そんなもの売るなら売る、使うなら使うでさっさと手放さないか?」 「んー、でも、何かこれだけは他の宝石と違って、今はその時期じゃないって気がするのよね。たださ、これ本当に神龍の碧鱗なの? だってこれ、どこにでもある落とし穴に落ちてたものよ。何だか胡散臭くない?」 「いくら胡散臭くても、それは歴とした本物だ。鑑定士にもお墨付きを貰っただろう」     
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