竜を待つ人

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ドラゴンスレイヤー?ああ、都じゃ“竜を狩る騎士様”の事をそう言うんだね。 てこたぁ、おたくは?ここへは旅の途中で寄ったっていうよりは、その話を聞きに? 有名になったもんだね。いや、もっと広く世間に伝えていくべきだったと思っているよ。 “あの話”はね。 ははぁっ、すると、あれだね?お前さん取材記者って言う奴だね?新聞って言うんだろ? ここら辺でも見るよ。朝いちばん、向こうの山から、運送用のガライ鳥に乗った若けぇのが 配達してくれる。もっとも、ワシは学が無いもんだから、文字なんて読めねえけどな。 ワシ等が若い時分はそんなもんなかったからな。時代は変わったねぇ。 ここも随分と昔と違うよ。 なに?“そんな町の変化と一緒に過ごしてきた、正に生き字引”トマス商会の親方、 “トマ爺さん”なら、何でも知っているって?嬉しい事を言ってくれるね。 わかったよ。そこにかけなさい。話してあげよう。かつて、ここで、今、ワシ等が座っている、この丘に暮らしていた竜を狩る騎士様の事をな。  ワシがお前さんと同じくらいに若かった頃、だから、お前さんが生まれる前だ。 今でこそ、国の統一がなされ、交通や他国との貿易、交流が盛んで、穏やかな暮らしが 続いている。近い内に都で平和の記念式典があるそうじゃないか? だが、ワシ等の頃は、人も魔物も同じくらいに争う、危険な時代じゃった。 一歩、町の外に出れば、盗賊に怪物が蔓延り、多くの人が食われた。勿論、こっちだって やられるだけじゃ、叶わんから、剣に斧に弓矢を携え、戦ったもんだ。そうして、限られた地区の平和をどうにか保っておった。 だが、厄介な敵もいる。それが“ドラゴン”じゃ。アイツ等は小山のような巨体に自由に 飛び回る翼を持っておった。おかげで、いくら、足の速い馬に乗っても、 町に高い壁を作っても、平気で追いつき、乗り越えてくる。 オマケに火や、強風を口から吐く奴もおって、貴重な畑や大切な家族が焼かれ、 吹き飛ばされた。何故?奴等が人を襲うか?聞かんでもわかるだろ? 今は姿なくとも、書物や言い伝えの通りさ。奴等の餌はワシ等だからだ。何人もの友人や 家族が犠牲になった姿を見てきたもんじゃよ。
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