第29話【俺の相方はヒーローではありません。】

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 いつもそうだ。好きでも大好きでも愛してるでもなくて、もっと違う感情。それらをベースにした、もっと大きな気持ち。人はそれを愛と呼ぶのかもしれないが、真杜はそんな簡単な漢字一文字で、この気持ちを片付けたくなかった。 「ねえ? うのちゃんは、俺のこと好き?」  小さな声で少し眠たそうに聞かれ、やはりおかしいと雫は思う。 「今さらなに言ってんだよ。好きじゃなかったら、この状況なんなんだよ」 「だよね。他にもっとねぇのかなぁ……好きってだけじゃ足りないっていうか」 「なかしま?」  子供みたいに頭を胸に擦り寄せてくる真杜に、雫の心臓がどきんと跳ねる。こんな真杜を雫は知らない。 「……どうしたんだよ」 「感情が迷子」 (迷子? なかしまが? 嘘だろ)  人の感情までいつも見事に言い当てる真杜が、自分の感情を見失うなんてありえないことだった。 「言葉がね、見つからないんだよ。好きも大好きも愛してるも違う。うのちゃんのこと大事にしたいし、してるつもりなんだけど……時々、さっきみたいにおかしくなるんだよ。そういうの、なんて言うの?」  真杜が見つけられない答えを、雫が見つけられるはずもない。 「別に言葉にしなくてもいいんじゃね?」 「え」 「だって、ないんだろ? それに相応しい言葉が。だったら、ほら……なんだっけ。月が綺麗ですね、みたいなやつでいいんじゃね?」
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