帰り道

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帰り道

「相合傘してる時って相手の声がいちばん綺麗に聞こえるらしいぜ」 梅雨入りが発表されたばかりのとある月曜日の放課後のこと。 たまたまいっしょに教室から昇降口まで来ていたクラスメートの葉山は、ふと思いついたと言うようにぼそりと呟いた。 「……傘忘れたんなら素直に言えば?」 「えっ、違うって!」 「忘れてないの?」 「いや、忘れましたけど」 なんだかなぁと眉を八の字にして困った顔をしてみせる。 そんな表情を作っても葉山の顔は不細工にならなくて、神様はなんて不公平なんだと溜め息をつきたくなった。 葉山は女の子にモテる。 第一に顔がいいのだ。 切れ長の瞳にすっと通った鼻筋、薄い唇。 漫画の中でよく見るような典型的なイケメンが現実に現れたような感じで…… でも本人はそれを鼻にかける様子もなく、クラスの中でそんなに目立つグループにいるわけでもない私とも普通に話をしてくれたりする。 もちろん高校に入学した当初から女子が騒いでいたけど、なぜか特定の彼女を作る様子もなく遂に三年生になってしまっていた。
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