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苛々する。煙草の本数が増える。
「浅○南!3○歳!なんか、イライラする!」
4○歳でもイライラするわ、このヤロウ。やり過ぎた暴力と流血放置が気にかかって仕方ない。死ぬほどの出血じゃない。分かっていても頭には瀕死の犬。縋るようにこちらを見て小さく鼻を鳴らす。鼻を鳴らして力なく尻尾を振ろうとする。
ちらついてちらついて仕方ない自分に嫌気。
何が一番腹立たしいって。
「こんなとこに大葉育ててんじゃねぇよ」
気になった結果、中條の部屋に足を運んでいる自分に腹が立つ。
なんだこれは。いい人か?いい人なんですか?
俺が?あり得ない。相手の事情なんか知ったことなく暴力振るいまくってきた俺が?頭より拳。情より暴力で生きていた俺が?なぜ今扉の前で行ったり来たり。
「あ、エイさん」
挙げ句、その中條に見つかる始末。
エイさんって誰だよ。紙かよA3かよ。それとも魚か?つか、
「なんだい、そいつぁ」
「え。」
出先から帰ったんだよな?出掛けてたんだよな?
「ああ、シャツですか?昨日汚れちゃって」
相変わらずのハの字眉で笑う。その白と思しきシャツは血と泥で汚れている。
尻尾を振るな。なぜ懐く。
「いや、違うの着てけよ」
「あ、無いんです」
「は?」
「シャツ、2枚しか持ってなくて」
んんんんんー?
頭ん中疑問符乱舞だ。どういうことなんだ。
「立ち話もなんなんで、どうぞ」
嬉しそうに笑いながら入室を促される。いや、俺、昨日押し入ってますよね?押し入って暴行してますよね?なのに部屋にあげられちゃうし。
「何もない部屋ですみません」
言いながらポチ、じゃない、中條は一瞬姿を消し、なぜか電球をもって部屋に戻った。
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