伝説

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伝説

 昔、昔、あるところに一人の漁師がおった。漁の仕事を教えるために、まだ小さい息子をつれて、舟で海へ出た。  ところが、急に天気が荒れて、漁師の舟はひっくりかえってしまった。息子は死んだ。  なげき悲しんだ漁師は、海に叫んだ。 「どうか、海を守る海神さまよ。息子を生き返らせてください。かわりに私の命をさしあげますから」  すると、高波のはざまより海神が現れた。 「生き返らせることはできぬが、そなたの息子を思う気持ちに免じて、これをつかわそう。大事に育てるのだぞ」  さしだされたのは、一匹のクラゲだった。  漁師はガッカリしたが、それでも海神さまの授けてくださったものだと思い、海水をくんだタルに入れ、大切に持ち帰った。  家に帰ると、クラゲはみるみるうちに、死んだ息子とそっくり同じ姿になった。 「息子がもどった。生き返った!」  漁師は大喜びした。  だが、それは、やはり、クラゲにすぎなかった。  十年がたつと、ある朝、とつぜん、しぼんで消えてしまった。
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