第二幕 偽りのステータス

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「確かに話しましたけど、ここまで相手が迫って来るとは……このお客様が軽薄すぎるのでしょうか。風師さんの追伸内容が劣情を掻き立てる文面だったのか、あるいは風師さんをじかに眺めて、その姿に惚れたのか……」 「掃除中に一回、鉢合わせました」 「なら、そのときでしょうね。風師さんはのろまなドジっ子さんですから、掃除が遅れたせいで姿を目撃されたわけですね」  のろま。ドジ。笑顔で発せられた言葉が胸に刺さる。  時花の個性(ドジ)がこんな形で影響を与えるとは、予想だにしなかった。  もはや彼女は、こうした狂言回しを担う運命なのかと割り切るしかない。 「はうぅ、そこまで直截的(ストレート)に言わなくても良いじゃないですかっ。私も困ってるんですよっ……?」 「このメールは間違いなくあの男性客でしょうね。天然ボケかつ間抜けな風師さんのお姿は、ナンパ師には引っかけやすい(かも)だったのでしょう」 「む、むぅ……何だかひどい言われようです」  時花はしゅんと肩を落とした。  しかし自分がドジで隙だらけなのは本当だから、言い返せない。店長にすがったまま離れられず、上目遣いで店長の顔を覗き込んだ。  店長はメール・ボックスを閉じ、ひとまず返信は保留にしておく。 「男性客の本性を暴くことが出来ました。この点においては、ドジな風師さんのお手柄と言えますね」 「……褒めてませんよね、それ?」  ドジが手柄になる、なんてことがあるのだろうか。  第一、何の役に立ったと言うのか。  男性客の本性が何に影響するのだろう? 「風師さん、怪我(けが)の功名ですよ。あなたの掃除が遅れたことで男性客の目にとまり、このメールが書かれたのです。全ての事象は連鎖しています。おかげで真実を暴けました!」 「え? え?」  店長は時花を見下ろすと、茶目っ気たっぷりに片目をつぶった。
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