たった5分の幸せ

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「……なに、それ……」 私の呟きが健太郎にはきつく聞こえたようだった。 何気なくしていたことが、これほど友人を傷つけていたなんて。そう心を痛めているのがよくわかる。 なんだ……そういうことだったのか…… 九州出身の母は、今もずっと九州の甘い醤油を使って味付けをしていた。 その味は、彼にとって地元の味で、彼女との思い出の味だったんだ…… 「……ごめん」 もう一度、謝られて、私は息をついた。 「……もう……いいよ?」 「でも……」 「健太郎が、どれだけ彼女を好きか、わかったから……」 本当は傷ついていた。でも、そう言わないと、心が納得しないと思った。 私はいつの間にか頬に流れていた涙を拭いて、健太郎をまっすぐに見つめて言った。 「でも、もうお弁当、取りに来ないでね」 「……」 「明日からは自分でお弁当作るから。お醤油の味も変えて、特別美味しい調味料を使って、今よりももっと美味しいお弁当作るんだから」 そんなの、簡単に作れるわけないのに。 でも、そう言いたくなったんだ。女としてのプライドだった。 健太郎は困ったように眉を寄せ、「……わかった」と言った。
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