たった5分の幸せ

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イケメンの癖に、性格がいいから困る。 モテる癖に、チャラくないから困る。 私のことを振る癖に、私以上に傷ついた顔をしているから困る。 困る、困る、と思いながら、初めて告白したいと想えるほど好きになった人が、健太郎でよかったとも思う。 健太郎はずっと寂し気な目をしていて、私はこれ以上彼を困らせたくないと思った。 私は胸にこみあげてくる思いをひた隠して、言った。 「健太郎。聞いてくれて……ありがとう」 そして、精一杯の笑顔を作った。 きっと、引きつっていて、目も真っ赤で、不器用な笑顔だったと思う。 でも、彼の思い出に残る私は、笑顔がいいと思った。 「……こちらこそ、ありがとう。葵がいてくれたから、俺、この学校を好きになった」
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