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遺体を荷台に収容すると、大友は上司に報告した。
「ご苦労。ではセンターに戻るように」
上司のルート操作により、車は食料センターへと動き出した。センターに運ばれると、遺体は食品加工され、食料となる。
黒田が「やれやれ」とため息をつき、シートにもたれかかった。
「少し寄り道していいか?」大友が言った。
「なぜ?」
「どうしても確認したいことがあるんだ。頼む」
黒田はその言葉に驚いたが、うるさい嫁のいる家に帰るより、大友に貸しを作った方が良いかと思い、その願いを聞き入れた。
車は目的地近くの駐車場に着いた。
大友は、荷台の中で眠る女性の顔や肌に付着した血を、丁寧に拭き取った。
「もういいだろ?」
黒田は荷台の外から、大友に声をかけた。
「ああ」
大友は遺体を残し、荷台から降りた。
「荷台の鍵を閉め忘れるなよ」
黒田は頷き、ロックを掛けた。
「ここら一帯は治安が悪そうだ。下手したら盗まれるぞ」
車を止めた場所は、低所得者の住まう住宅街だった。
「盗んでも正規の食料センターで加工しなきゃ意味ないだろう」と黒田がぼやいたが、「最近の闇加工業者の腕はだいぶ上がったらしいぞ」と大友が答えた。
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