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加減が分からず、上唇が歯に当たって少し痛い。眉間に皺を寄せたまま、彼の唇に自分の唇を押し付けて、薄く瞼を開けると、アイリスが目論だ通り、彼は驚いている。
目の前にある琥珀色の瞳が不意を突かれて、驚きに見開かれているのだ。
(ふふん? どうよ?! 私からキスされるなんて、思いもしなかったわよね。最初から主導権とられっぱなしだったものっ)
しめしめと思った。彼の驚いた表情を見て、やっと先程からちょっとムカムカしていた腹の虫が収まった気がした。
しかし、そんな彼女にとって誤算だったのは、目の前の男がやられっぱなしの男では無いと言うことだ。
次の瞬間、彼がふっと笑ったように見えた。
「……んっ?! ……ッ、ふぅ、んんっ?」
先手を取られた報復のように、コーウェンがアイリスの唇を貪る。薄い粘膜を舌先がなぞり、僅かに開いた口腔の中へ忍び込む。
「……んッ……ぅ?!」
(ああ……駄目。これじゃあ、さっきと……)
頭の中では、彼に意趣返しをしようと思っていたのに、先程からアイリスのぞくぞくする部分ばかりを狙ってコーウェンは攻めてくる。
ぬるぬるとした温かい感触が、気づいてみれば嫌でなくなっていて、それどころか気持ちよくてふわふわしてくる。
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