序章

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 そこで彼女は、国の再興を何とか実現する方法が無いかと知恵を巡らせ、目立たぬよう姿を変え、アルディアの市井に紛れて情報を集めつつ、宿屋の養女として働きながら機会を伺うようにして、数年の月日を過ごしました。  そんな彼女が二十歳になる頃、これもまた運命の悪戯とでも申しましょうか……とある偶然から――さる御身分の、若く美しい青年と出会い、恋に落ちました。  皇女様と彼女の夫君となった美しき青年ユーリは、アルディア王国の王弟殿下であり、また大層腕の立つ騎士でもありました。  彼らは、旅の途中で出会ったとある高名な魔術師と共に、その叛逆者たる皇帝殺しの首謀者と対峙し、見事に打ち勝ちました。  皇女様と夫君のふたりは、そうして、様々な難題や困難の末に結ばれ、皇女様はやがて、子供を宿します。  十月十日の月日が満ち、皇女様は彼女によく似た可愛らしい娘を産み落とし、その数年後には、弟君も生まれました。  二人の子供達に恵まれ、幸せに暮らしました。めでたし、めでたし。と、物語の最後に申しますのが、常。決まり文句でございます。  ――ですが、二人の子供のうち弟君には無いものが一つだけございました。つまりは、姉君であるその娘だけが、持って生まれて来たのです。  そう。その娘は生まれつき……少々変わった力を備え持っていたのでございます。  娘の母親である皇女様の名はエメリア。     
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