神の素顔、かくありき

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神の素顔、かくありき

 目が覚めると、そこは見慣れない場所だった。  いや、見慣れないのも無理はない。なぜならそこには、見慣れない以前に現実では見ることのできない光景が広がっていたからだ。  まずは辺り一面が空だった。見渡す限り、上も、下も、余すところなく空で埋め尽くされていた。  まるで地面を全て鏡に置き換えたような光景であり、例えるならボリビアにあるウユニ塩湖のようだ。    次に、その世界には朝と昼と夜が混在していた。これについては、俺の語彙力では形容できないことをご容赦願いたい。  ただ幾つか言えることとして、まず朝・昼・夜に世界が三等分されているわけではない。そして、高速に時間だけが進み朝・昼・夜と移り変わっているわけでもない。  こう何と言えばいいのかは分からないが、言葉通り、嘘偽りなく朝と昼と夜が同時に現れているのだ。  さらに、恐らくその影響だと思うのだが、明るさに関係なく星が瞬いていた。  世界は明るく真っ暗で、それなのに辺り一面に星空が広がっている。  ――いや、訂正しよう。星が瞬き、星空が広がっているのは本当だが、そもそもここには明るさ――光がない。ないにもかかわらず、なぜか世界を知覚できていた。     
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