愛・奇・光――縁

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愛・奇・光――縁

「フン、フンフフーン♪」  分厚い雲で月明かりのない深夜の住宅街に、軽快な鼻歌が吸い込まれて消えていく。その、能天気で朗らかなメロディは、辺り一帯を覆う暗闇にひどく不釣り合い――と言うより、もはやそれは、早朝になると喚き出す小鳥達の鳴き声のようでさえあった。それ程までに彼女の声は、この真っ暗闇の中にいながら、底抜けに明るかったのだ。そんな、いかにも私は幸福ですと周囲へ喧伝しているかのような爽やかで、だからこそ鬱陶しいその声音は、俺の心を延々とささくれ立たせていく。  そして俺は、自分の中に渦巻きだしたドス黒い感情をひっこめるだけの良心を、持ち合わせてはいなかった。 そう、本来夜とは、闇とは危険なものなのだ。どうやらこの鼻歌の奏者は、それに気付いていないらしい。     
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