4.準備は万全に。

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 日本画は、この先一生描け無いのでは無いかと思っていた。一時は、ここは異世界だから郷に入れば郷に従えだと思って、日本画を諦めてヘリオスに油絵を習ってみたものの、思うように自分の絵が描けずにいた。  この世界にも似たものがあるなんて、嬉しくてしょうがない。こんな嬉しいことは無い。 「……気に入ったか?」  聞き覚えのある声が背後から掛けられ、美月が振り向くと、天使のような少年が、そこに立っている。 「――ッ」  美月は無言で駆け出し、興奮し切った様子でレオンハルトに抱きつく。 「ぅわぁッ?!」  ふわりと柔らかな身体に抱きつかれて、レオンハルトは少々彼にしては珍しい素っ頓狂な声を上げながら、目を見開いた。彼のそんな様子に気付くこともなく、美月はぎゅうぎゅうと、その少し華奢な少年の体を抱き締める。 「……ありがとう、ございますっ……こんな……本当にっ!!」  胸がいっぱいで、途切れ途切れにしか言葉にならない。感謝してもしきれないくらい、嬉しいのに。  自分の為に手を尽くして、こんな高価で手に入りにくいものまで取り寄せてくれた――それが、例え彼自身の依頼の為に必要だからと言う理由でも、美月の為にレオンハルトが動いて揃えてくれたことには違いない。  言葉にならない気持ちを伝える為に、今も興奮し過ぎてふるふると小刻みに震える手で、今度は彼の少し冷ややかな手を取り、両手で包んでぎゅっと握った。 「!!」     
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