1.落ちました。

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1.落ちました。

 ――何故、こうなった?  名塚美月(なづかみづき)、二十四歳。  職業は一応、日本画家をしている。  「画家」とは、言ってもまだそれだけで食べていけるほど有名では無い。うん。  まぁ、それは仕方ない。実力社会だからね……って、今それは良いのですよ。  とりあえず、私の素性は後回しです。  ……それより、今現在とても私は困惑しているのです。現在進行系で起こっている事態に。  え? それは何故かって?  それは、ですね…… 「……美月、どこ見てるんですか?」  この、金髪の青い瞳のふわふわした美少年……いや、今は美青年(?)になった超絶可愛らしく笑みを浮かべる年下の腹黒い天才宰相様に…… 「僕を見て……美月。もう、逃さないからね」  普段は書類とにらめっこばかりしている賢そうな瞳に、今は獲物を狙う肉食獣のような光を宿し、その綺麗な顔立ちに欲情を隠そうともせず、舌舐めずりでもしそうな様相で物欲しそうに美月を見ている。 (……そんな瞳で見ないで)  そんな飢えた瞳で見られたら、どうしていいか分からなくなる。  私は……一体、どうしたらいい?  そう。私は今、まさにこの人に食べられそうな勢いで押し倒されているからです!!  本当、何故こうなった!!
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