終章 桐生愛華がたった一つ信じる事について-2

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 もし揺らいだとしても、何を戸惑う事があるだろう。人は元々、お互いを完全に分かり合う事など出来やしない。だからこそ人間は、間違いを犯しながら今の自分達を作り上げた。五十嵐君が再び私から離れたとしても、私は諦めない。彼の望む私になって、そんな彼にも、私が望む彼になって欲しい。  きっと、出来る。  人類は今日この日、大きな混乱を迎える。人類初の異星人コンタクトが引き起こした、人類初の大混乱を。  そして同時に、土星が示す困難に立ち向かい、いつかきっと秩序を取り戻す。  私はもう、迷わない。  夏休みが終わる前に、また箱田さんや堂守君達と何処かに行こう。海がいい。きっと、忘れられない思い出になる。  そして何年経っても何十年経っても、「あんな事もあったね」なんて笑い合いながら、この土星の日を思い出すのだ。  そんな将来に期待を抱きながら、私は静かにその星が昇るのを、二本の足でしっかりと立ち、眺め続けた。 (了)
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