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「ああ、」
ガゼボを出たところでウィルトールが足を止めた。なあにとアデレードが首を傾げると彼は小振りの細長い箱を取り出した。
「言っただろう、見せたいものがあるって」
「手紙じゃないの?」
「あれは見せないでおきたかったもの」
蓋が静かに開かれる。アデレードはわあと感嘆の息をついた。
金の鎖のネックレスだった。ペンダントトップは一粒のダイヤモンドで、その先に一粒の真珠が吊り下がっている。
「十八歳のお祝い」
「え、でも」
「フォルトレストに戻るのはしばらく先になりそうなんだ。だから」
「ふうん……」
声音が僅かに陰る。それでも「貰ってくれる?」と顔を覗きこまれれば拒む理由があるわけもない。
ウィルトールは苦笑を漏らし、彼女の胸元を飾っていた緑玉のネックレスとそれを付け替えた。星明かりに照らされた二粒の石は清らかに煌めいている。
先のネックレスを代わりに納め、アデレードは箱を胸に抱いた。
「……ウィルトール、ありがとう」
「アディにひとつだけ言っておきたいんだけど、」
青年は神妙な面持ちで片手を腰にやった。
「これは、魔術道具ではないんだ。──走らないって約束できる?」
「ウィルトール!」
真っ赤な顔で足をどんと踏み鳴らす。
楽しそうに目を細める彼をアデレードはしばらく睨んでいたが、ほどなく白い歯を見せその胸に飛びこんだ。
***
これにてふたりの物語は幕引きとなります。
ご高覧いただき本当にありがとうございました!
※スター特典にて特別編「麗しき姫に捧ぐ誓い」を公開中です。
内容としては最終話「星影に結ぶ珠」で両想いになったふたりの翌日の話になります。
よろしければそちらもお楽しみください。
よかったねと思っていただける結末になっていれば幸いです。
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