7.星影に結ぶ珠

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 * * 「ああ、」  ガゼボを出たところでウィルトールが足を止めた。なあにとアデレードが首を傾げると彼は小振りの細長い箱を取り出した。 「言っただろう、見せたいものがあるって」 「手紙じゃないの?」 「あれは見せないでおきたかったもの」  蓋が静かに開かれる。アデレードはわあと感嘆の息をついた。  金の鎖のネックレスだった。ペンダントトップは一粒のダイヤモンドで、その先に一粒の真珠が吊り下がっている。 「十八歳のお祝い」 「え、でも」 「フォルトレストに戻るのはしばらく先になりそうなんだ。だから」 「ふうん……」  声音が僅かに陰る。それでも「貰ってくれる?」と顔を覗きこまれれば拒む理由があるわけもない。  ウィルトールは苦笑を漏らし、彼女の胸元を飾っていた緑玉のネックレスとそれを付け替えた。星明かりに照らされた二粒の石は清らかに煌めいている。  先のネックレスを代わりに納め、アデレードは箱を胸に抱いた。 「……ウィルトール、ありがとう」 「アディにひとつだけ言っておきたいんだけど、」  青年は神妙な面持ちで片手を腰にやった。 「これは、魔術道具ではないんだ。──走らないって約束できる?」 「ウィルトール!」  真っ赤な顔で足をどんと踏み鳴らす。  楽しそうに目を細める彼をアデレードはしばらく睨んでいたが、ほどなく白い歯を見せその胸に飛びこんだ。 *** これにてふたりの物語は幕引きとなります。 ご高覧いただき本当にありがとうございました! ※スター特典にて特別編「麗しき姫に捧ぐ誓い」を公開中です。 内容としては最終話「星影に結ぶ珠」で両想いになったふたりの翌日の話になります。 よろしければそちらもお楽しみください。 よかったねと思っていただける結末になっていれば幸いです。
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