一段目:【来訪者】―ライホウシャ―

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「そう…或る意味、キミのお父さんは生きている。生かしているのは、キミ自身だ。」 「ボク自身…って?」 「キミは、お父さんの霊を『骨』という器に閉じ込め、この世に縛り付けてしまったんだよ。自分の命を代償にして、ね。」 「そんな──!」 …ちょっと待て。 ボクが、何をしたと?  困惑のあまり、口をパクパクさせるボクに、彼は尚も畳み掛ける。 「キミの気持ちは、理解出来るよ。誰だって、慕わしい人の死を受け入れる事は容易ではないさ…でもね。これは禁断の法なんだ。キミのした事は結果的に、お父さんの成仏を妨げ、自分の命をも削っている。早く互いの(みたま)を解放してあげないと、結局どちらも救われない。」 「───みたま。また、魂か…」  …ああ、もう何が何だか… 急にそんな事を言われても、信じられない。 そもそも、霊や呪術の類なんて医者の管轄外だろう? これじゃあまるで霊能者じゃないか!  ボクの考えを察したのか…坂井医師は、ふと優しい顔になった。 「確かに、これは内科医の仕事じゃない。だが、此方の仕事も、僕の生業のひとつには違いない。」 「なりわいって?」 「ボクは、癒者(いしゃ)なんだ。『癒す者』という意味のね。どちらが本業なのかは、自分でも判らないけれど?」 「癒す、者…癒者?」  不思議な言葉だ。 医学とは違うようだけれど、具体的に何をするのかは解らない。 「──まぁ。この世には、医学で救えない特別な『病』もあるって事さ。今から、それを証明してあげるよ。」 「…え?」
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