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気づけば夜の神社に降る雨は、小雨になってきていた。
理夏は頬をゆるめたまま、眞尋に向き直る。
「いや……ひとつ理由が出来た、ありがとう」
「俺のほうこそ、ありがとな」
眞尋のなかで理夏の認識が変わっていく。
(……最初はやべぇヤツかなぁって思ったけど……確かに、抱えてるもんは普通じゃなかったけどよ……)
第一印象よりもずっと純粋で真面目な少年だった。
眞尋の視線の先で、理夏は神楽殿の外を見る。
「終わったのかもしれない」
「おう、そういや、音がしねぇな」
ただ静かな夜と化していた。理夏はカーディガンを掴む。
「様子見にいくか」
「そうだな。電話通じねぇし、理夏の組の人たちも心配してっかもなぁ」
眞尋も濡れた着物を抱え、草履を履いた。理夏はスニーカーを履く。
神社を離れる道程は、行きと違ってスマホの明かりがないから、常闇だ。
歩きながら、眞尋は理夏の手首を掴み、そのまま手を繋ぐ。暗闇の中でも、理夏がこちらを見たのがなんとなく分かった。眞尋は前を見たままで告げる。
「離れんじゃねぇぞ。危ねぇから」
「さすがに、二度も転ばない……」
「や、俺が転ぶかもしんねぇし」
「俺は眞尋の杖じゃない」と、言いながらも、理夏は軽く笑っている。
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