誕生日プレゼント

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 フィアンセの田中真也は、涙をこぼしながら、空を見上げている。 「南、どうして俺を残して逝ってしまったんだ?あれほど結婚を楽しみにしていたじゃないか!」  川合南は真也の前に立っている。 「真也、私はここよ、見えないの?気がついてよ」 南が何度叫んでも、真也は気がつかない。 3週間前に南は真也に婚約指輪を渡される。 「南、俺の妻になって下さい」 「私でいいの?」 「当たり前だろう!お前しかいないの」 「ありがとう!お受けします」  真也は、南の指に指輪をはめる。その様子を陰から見ている人物がいた。  1週間後の会社の帰り道の途中で背後から白い軽自動車が走ってくるのを感じた。振り向くと車は通りすぎていた。  しばらくして数台のパトカーと救急車がやってきた。たくさんの警官が現場検証していた。その一人が布を剥がした。それは、なんと自分だったのだ。南は自分の身体を触って魂だけになったことを初めて感じた。 「私、死んだんだ!」   霊安室で自分の亡骸の前で泣いている両親と真也の姿を目の当たりにした南は複雑な思いで見ていた。 「このままで死ねない、私を殺した人を突き止めるまでは!」  あの時、自分を引いた乗用車は白。見つけることはかなり困難なものだった。 「あの時、暗かったから運転手は見えなかったけど、運転席のフロントガラスに見えたのはパンダの縫いぐるみ、あれは、私が中学生の時に誕生日プレゼントであげた覚えがあるわ、もしかして…」  南は再び走り出した。そして着いた先は、幼馴染みの中山萌の家だった。チャイムを鳴らす南。出てきたのは萌だった。姿が見えないはずなのに萌はニヤリと笑った。 「南、ようこそ我が家へ」 「萌、どうして私を殺したの」 「何もかも奪ったあなたが憎い。仕事も田中くんも。だからあなたを消したの」 南と萌の闘いは始まろうとしていた。
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